今日、ウラン・ウデに二人の人が来た。
一人は日本人。
もう一人はロシア人。
日本人の人は、歌を歌って世界中を旅している人。
少しの荷物と少しのお金を持って
いろんな所で歌を歌う。
飛行機にも汽車にも乗らず
ウラジオストックからモスクワ、そしてもっと
西までヒッチハイクで移動する。
明日はどうなるのか分からずに。
この人は自分で歌を作る。
人生で自分の経験を通して思った事を歌にする。
だから、歌が真に迫っていると言うか
嘘が無いと言うか、、
ようするに本当の事なので心を打つのだ。
それで、その歌の一番大切な所は結局人生の価値なのかな、
なんて僕は勝手に思っていた。
歌の中でたびたび出てくる言葉は、
”人との出会い”
”別れ”
”今”
と言う事。
一期一会だな。
お金という価値に囚われず生きてきた人の歌に、
僕は感動すると同時に強く共感した。
小さな地元の博物館に、多くの人が集まり、
限られた、奇跡的な一瞬を一緒に過ごした。
皆の顔は、優しさに溢れ、そしてそれぞれの家に静かに帰って行った。
僕も、心がぽかぽかと温かく、
なんかとても幸せな感じがしていた。
帰り道、雨が少し降ってきた。
本物の春が来た証拠だ。
もともと雨が降らない町ウラン・ウデ。
雨に降られながら
「あたま!はげるな!」
と思いながらニコニコ笑う。
夜、一人でニヤニヤしている僕は相当に不気味なんだろうとも思いながら。
もう一人、ウラン・ウデに来た人。
ウラジーミル・ウラジミーロビッチ・プーチン。
そうプーチン大統領です。
町中凄い警戒態勢。
そりゃそうだ、ロシアの大統領がここに来るなんて滅多にある事じゃない。
ロシアのテレビでもニュースでやっていたみたい。
ペルミに住んでいる妻の両親も知っていた。
劇場付近の町の中心地は交通閉鎖。
警官が街角街角に立っている。
警官もピリピリしている。
警官が町の人に怒鳴っている。
町の人は「怒鳴らないで!」
と怒鳴っている。
警官は「怒鳴っていない!」
と怒鳴っている。
僕は「怒鳴っている。」
とすれ違い様に言った。
警官が「小僧め!」
と言っている。
ウラン・ウデに二人の人が来た。