チュメーニ朝4時30分(モスクワ時間2時30分)ホテルを出発。
7:00(モスクワ時間5:00)チュメーニ発。
モスクワ7:45着。
8:30空港から出る。
「まっ、9時半には家に着かないだろうけど10時半には着くとして、
一時間半ぐらい寝られるな。」
と思ったが、あまかった。
モスクワの渋滞をなめていた。
それは凄まじいものだった。
道路と言うよりも駐車場と言った方がピッタリくるものだった。
結局、家に着いたのは11:30。
12:00には家を出なければならない。
シャワーを浴びて、荷物を揃えてすぐに出発。
あー、眠い。
父親の事が心配だ。
「お父さん、大丈夫?」
「ぜんぜん平気。」
昔から分かってはいたのだけど、やっぱり化物のような人だ。
僕はフラフラだ。
このまま運転すると寝ちゃいそうなのでタクシーをつかまえる。
白タクだ。
手を上げるとすぐにつかまり、あっという間に交渉完了。
荷物をトランクに積み、僕らも車に乗り込む。
少しだけでも寝ておこうと思ったが
またまたあまかった。
この運転手さん、話し出すと止まらない人。
「ねえ、あんた韓国人でしょ。う~ん、もしくはタジクだ。
そうに決まってる!やっぱり。
ねえ、そうでしょ。
ちょっと~、どこから来たの~?
ん?韓国だな。
お~、違うかふむふむ、タジクだ。
言葉で分かったよ。
タジク語だな。
そうでしょ。ねえ、ちょっと~。」
「日本。」
「ワッハハハ!嘘つきめ!韓国だな?」
「日本。」
「、、、、に、ほ、ん?
何やってんの、こんなとこで。
あんた馬鹿じゃないの?
なんでモスクワにいるんだ!
な、ん、で、日本からモスクワに来るの!?!?
何が好きでこんな所に来たんだ?」
「バレエ。クラシックバレエ。」
「、、、、、、、。」
「ロシアのバレエが好きなんだ。」
良い気になって返事をしたのが間違えだった。
もう、この後は大変。
火のついた彼は止まる事なく喋り出したのだった。
僕はこの運転手さんの思考回路はいったいどうなっているのか考えながら
早くエストラード劇場に着く事を祈っていた。
幸い道が比較的空いていたので予定の時間に劇場に到着。
僕らは建物の中に入る。
エストラード劇場には何年も来てないので、
どこに何があるのか良く覚えていない。
しばらく楽屋を探していると、
続々と仲間が集まって来た。
イギリスから崔由姫ちゃんと蔵健太君。
ロイヤルバレエでめちゃくちゃ忙しい中、
わざわざモスクワまで来てくれたのです。
この公演が終って翌日朝3時にホテルを出てモスクワ出発。
早朝にロンドン着。
その日に本番。
どうです、この忙しさ。
なんという情熱!
嗚呼、友よ!同志達よ!
次にドイツ、ベルリンから針山愛美ちゃん。
愛美ちゃんも忙しい中来てくれた。
本当は前日のチュメーニにも出てもらいたかったのだけれど、
その日は舞台があってどうしても8日の早朝にしかモスクワに着けない。と言う事で、早朝
ベルリンからモスクワに到着。
久しぶりの再会が嬉しい。
チュメーニから着いた三木雄馬君、織方麻衣ちゃん、小池沙織ちゃん、多久田さやかちゃん、池本祥馬君。
皆眠いだろうにな~。
舞台上でレッスン開始。
バーなんて無い。
イスとか壁につかまって、
もくもくと体を温める。
僕の父親も客席でレッスンに参加している。
プロだ!
レッスン終了後、リハーサル開始。
一部魂のリハーサルはなんとか順調に終える事ができた。
二部もこの調子!のはずなのに舞台上の準備が戸惑っている。
残念ながらこの劇場、スタッフがぜんぜんダメだ。
皆自分勝手で、文句ばっかり言っていて、
言い訳が多すぎる。
スタッフの足並みばらばら。
時間はどんどん過ぎて行く。
僕は特別出演してくれたマキシム・フェドートフと一緒に呆れかえる。
いい加減頭に来て僕は怒鳴る。
怒鳴っても進展なし。
ファルフはあくまで冷静。
しかしこの人、実生活でもカッコよすぎる。
冷静かつ情熱的。
本当に憧れちゃいますね。
愛美ちゃんが「守弘さん、踊りに専念した方が良いですよ。」と優しく言ってくれた。
もう全曲リハーサルする時間は無い。
僕はさやかちゃんに言う。
「だめだ、ダイアナできないや。」
さやかちゃんは爽やかに
「はい、大丈夫です!」
と言ってくれた。
《おーい!スタッフの方々!
このダンサー達を見習って下さい!》
と僕は心の中で呟いた。
ほんと、ファルフとマキシムと愛美ちゃんと健太と由姫ちゃんとさやかちゃんと雄馬と麻衣ちゃんと沙織ちゃんと祥馬の爪の垢を煎じて飲んでもらいたいと思ったほどだ。
さて、本番の時間は刻々と迫る。
僕は舞台を後にし、メイクをしに楽屋に戻った。
次回に続く。