家のどこを探しても衣装は見当たらない。
何べんも何べんも探したけれど見つからない。
もうお手上げだ。
しょうがない。
他に代わりの衣装を考えなければ。
妻が即座に代えを発見。
「これはどう?」
金色の竜が刺繍してある羽織を持ってきた。
「むむむ、、。」
「よし、これで良い。」
正確には「これしかない。」である。
他の持ち物もしっかりまとめ、いざ空港へ。
空港では、懐かしい友達との久しぶりの再会が嬉しかった。
イルザさんと行く時はいつも大体顔ぶれが同じなのだが、
今回はダンチェンコ劇場のチェルノブロフキナとザバブーリンだけ。
いつものメンバーで行かなくなった一人はアキレス腱切断。
もう一人は地方のバレエ団の監督になったそうだ。
僕はこのグループが大好きだった。
皆仲良しで、互いに尊敬しあっていて、
そして、大人の踊りを踊れるダンサー達だった。
この中に入ると僕は一番年下。
皆は僕をよくからかったりもした。
でも優しく大切にもしてくれていた。
もう、こんなグループで行く事はないかもしれないな。
今回はボリショイから1名、マーリンスキー劇場から1名、クレムリンから1名、
そしてリトアニアから日本人女性が1名、それにダンチェンコの2名、イルザさん、僕、
計8名のダンサーのグループ。
リトアニアの日本人バレリーナは浜中未紀ちゃん。
彼女とは10年以来の再開だった。
彼女も色々苦労している様だけどがんばっている。
偉いな~。
さて僕らは前回も書いたように、
長い飛行機の道のりを経て無事にアフリカに着いた。
当然の事だがアフリカに着いてまず感じたのは、
黒人だらけだという事。
僕にはとても見慣れない光景だった。
ホテルからは個人での外出が禁止された。
そんなに危険な事もないと思うけれど
万が一の事があったらいけないと思ったのだろう。
それでも僕は翌朝友達と散歩に出かけた。
始めはちょっと怖い感じがしたけれど
慣れてくると良い感じだ。
すれ違う時に僕らの事を見ている。
何人かと目が合って不思議に懐かしい感じがした。
何だろう?
次回へ。 岩田守弘