どんな人でも、他人の目や評判は気になるものですが、バレエダンサーは、子供のころから、自分を綺麗に見せる事や、自分の踊りで、人を喜ばせるという事を目的にしているので、舞台の前は、いつでも不安を背負っています。
だから、お客さんの拍手や良い批評は、僕らには最大のご褒美ですね。
ファンというのは、お客さんの中でも、特に通じ合えた人達だと思うのです。
その人達が舞台を見て、応援してくれた時は、不思議に良い踊りが出来る事が多いです。
日本のファンは、クレイジーですか?という質問がありましたが、実は、僕にはその様なファンはいないのでちょっと分かりません。
僕のファンは、僕の踊りに感動してくれた人達で、いつも、バレエを楽しみに来てくれて、そして喜んで帰って行く人達だと思います。
決して、僕の事を訳も分からず、神様の様に祭り上げる人達では無いからです。
でも、やっぱりサインや握手を求められると、嬉しいですけどね。へへへ。
床のことですが、これはダンサーにとって、とっても重要な問題ですが、残念ながら、劇場の床は自分用に変えることができません。
僕はボリショイで働く以前、ロシアバレエ団で働いていましたが、海外公演が多く、色々な舞台に立ちました。
大きなオペラハウス、すごく小さな室内音楽劇場(めちゃくちゃ小さい)、スタジアムの特設舞台(めちゃくちゃ大きい)、浜辺に作った舞台(湿度が高くてびちゃびちゃ)、洞窟の中の舞台(空気が薄くて倒れる人あり。しかも更衣室が無いので、僕らの着替えを観光客が見ていく)、冬の野外劇場(体から湯気が出ますね。)など・・・。
踊ると、とげが刺さったり、穴が開いていてたり、あちらこちらに段差があったり、傾斜や床が波をうっている舞台もあったりと、様々です。
踊る人は大変ですが、お客さんには言い訳は出来ません。
ある程度どんな所でも、踊れなければ!と思います。
そしておかしな事に、踊りの上手い人、また、上手く踊れてしまう時は全然気にならないし、口に出しません。
やっぱり言い訳なんです。
ダンサーの人 強く逞しく踊っていきましょう!
岩田 守弘