幕が開き、ペルミ州長とバレエ団芸術監督の挨拶、そしてペルミバレエの歴史のドキュメンタリー映画が
約一時間上演された。当時を知るバレエ教師のお話を交え主に戦後の疎開の映像がながれた。戦争で焼かれた家の数々、悲しむ人々。破壊されたキーロフ劇場(現在のマリーンスキー劇場)、そしてそれを聞き駆けつけたダンサー達がバケツで水を運び消化し続ける話。その後、ディレクターがその日も舞台を行うと発表し、皆んながびっくりし、衣装が焼けてしまったので他の衣装を着、観客席の上半分には煙がこもっていたので、客は下に降りてきて立って見ていた話。
食料が足りない状況だったけれど、アーティストにはチケットが交付され、特別扱いだったらしく飢えた覚えがないと言う。パンが支給されバターが支給されジャガイモが支給されたから大丈夫だったと言う。
この映像を見ると、家が焼け壊される事に心が痛くなるし、人々の表情が悲しくて仕方がなくなる。特に子供達の表情が痛々しい。
先日映画館でハリウッド映画を見たときはボカンボカンと家が破壊され、人々が殺しまくられていた。人々が泣きまくっていた。それを見て、「う〜ん、凄いな〜。面白いな〜、」と感じてしまっていた自分が恥ずかしく思われた。
2部には、白鳥の湖の3幕。3部は小品集という構成であった。
ペルミの劇場は、創設146年なので、
はじめは、オペラのみ上演されていたらしい。
その後、バレエが上演されるようになったので
今年で90周年という事になる。
そう、バレエは比較的新しいジャンルなのだ。
要するに、改革があったこそ存在することが出来たのだ。だから新しい事は素晴らしい事で否定しないほうがいいのだ。
歌舞伎だって、ある時期形を変えたから今まで生き残ったと聞いた事がある。
バレエも、今まさに変わっている時期なのだと思う。変わらなければならない時期なのかもしれないとも思う。
そうは思うのだけれど、僕はどうしても昔のバレエが好きで、今のバレエを受け入れがたいところがある。
隣の席に座っていた、リュボーフィ・クナコワさんも同意見らしい。
リュボーフィさんは、ペルミの出身。ここのバレエ学校を卒業し、ここの劇場で3年間働いた後、ペテルブルクのキーロフ劇場でソ連を代表するバレリーナとして活躍し、引退後キーロフ劇場で教師をさせている。彼女とは91年の時に一緒の舞台に立たせていただいてからのお付き合いである。ペテルブルクでも同じ事を感じていらっしやるらしい。
ペルミには、僕の大好きなナタリア・モイセーエワという一人のバレリーナがいる。
上品で美しく、個性的で可愛らしく、とても優しく女性的な踊りをした。
いつも、彼女の踊りが見れるのが楽しみだったのだけれど今回の舞台に彼女の姿は無かった。
今年引退をしたのだそうだ。
舞台には、若くてスタイルが良くて顔も綺麗で技術もしっかりしていて、、、のダンサーがいっぱいいる。
でも、彼女の様なダンサーがいない。
2人、良さそうなのがいたけれど、良さそうと、良いでは大きな違いなのである。
彼女とは、舞台終了後のパーティーで会えた。
引退後、劇場で教える事にしたのだそうだ。
彼女の踊りは、もう見る事は出来ないけれど、
彼女が教える事は素晴らしい事だと思う。
彼女とは、人生の事とかバレエの事とか沢山話をした。
いろいろと苦労話もある。
僕は彼女に言う。「君が教える事になった事は、凄く良かったよ。とっても嬉しく思うよ。今のダンサーについては、どうだこうだってあまり良く言わないけど、これからは、僕ら教える人の責任だよね。
今まで自分たちが教わってきた事を伝えていかなければならないし、また、伝える事が出来る
のは幸せだと思う。」
時代が変わっていく。
世代が交代されていく。
そこで伝統を伝えていく大切さを
僕の一番大好きなバレリーナと話す事が出来た
ペルミバレエ90周年記念であった。
終わり、、、
それは、新しいスタートなのだ!